馬が血だるまになるハリ治療の憂鬱
2006-11-19 17:00:00
僕が勤めていた牧場では、怪我をした馬や疲労が溜まっている馬の治療もおこなっていた。
注射を打ったり、患部に焼きゴテをあてたり、色々な治療法があったけれど、なかでも気が重かったのが「ハリ」だ。
これは、笹バリと呼ばれる大きな針で馬の皮膚を突き刺し、鬱血している血液を放出させるという治療法だ。
何十箇所にも渡って針を突き刺すので、当然のことながら馬には多大な苦痛を与える。
馬が本気で暴れると、人間ではとても制御できないので、まずはせまい枠のなかに馬を閉じ込める必要がある。
枠に完全に固定された馬に対して、さらに馬の急所である鼻をネジりあげ、抵抗ができないようにする。
鼻をネジるには、「ハナネジ」と呼ばれる専用の器具を使う。
僕は、この「ハナネジ」で馬を押さえつけられる役をよくやらされた。
押さえつけられた馬は、獣医の手によって、背中全体に針を突き立てられる。
プス、プスと皮膚から炭酸ガスが抜ける音が聞こえる。
同時に、大量の血液が滴り落ちる。
最後の仕上げとして、傷口に消毒用の塩を塗りこむ。
この作業も、僕がした。
血だらけの背中に素手で塩を塗るときの、ぬるりとした感触は今でも忘れられない。
心の中で、何度も「ゴメンな」と謝りながら、血液で湯気が立つ馬の背中に、塩を塗りこんだ。
Category : 競走馬の治療1
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