僕が牧夫になった理由
2006-11-01 17:00:00 Category : 牧場生活
二十歳の頃、僕は牧夫だった。
高校を出て一年間浪人、結局どこの大学にも入れてもらえず、さして興味がない建築という分野を扱う専門学校に「とりあえず」入学した。
学校生活は、苦痛そのものだった。
学校に行けば、建築士や建築デザイナーを目指す「熱い若者たち」が溢れていたが、建築に面白味を見出せなかった僕は、当然のことながらみんなから浮いた。
そのうち、学校よりも競馬場やパチンコ屋にいる時間の方が、長くなった。
秋を迎える頃、僕は学費を出してくれた母親に、「学校をやめたいんだ」と言った。
女手ひとつで僕を育ててくれた母親が、一生懸命に蓄えた学費を、何も得ることなく無駄にしてしまった。そう思うと、後悔で自然と涙が溢れてきた。
次は、自分が好きなことを、徹底的にやろう。
そう胸に誓ったのはいいが、はっきりいって当時の僕は無趣味人間で、自他共に認める「つまらない奴」だった。唯一の趣味が、競馬とパチンコという駄目っぷり。
自分の食い扶持は早く稼ぎたいという思いもあって、「とりあえず」パチンコ店でアルバイトでもするかと、アルバイト情報誌を買い込んだ。はっきり言って、失敗から何も学んでいない。
ところが、このアルバイト情報誌が、僕の運命を変えた。
「リゾート地」とジャンル分けされたアルバイト情報欄に、酪農や高原野菜の出荷作業などと一緒に、「競走馬の休養牧場のスタッフ」を募集する記事があったのだ。
パチンコ店でアルバイトをするよりも、きっと刺激的なことが待っているに違いないと直感した。
気がつくと、誰に相談することもなく、情報誌に載っていた電話番号にダイヤルをしていた。
こうして僕は、牧夫になった。
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